この街はいつもうるさい

私の住んでいる街はいつもうるさい。朝は鳥や虫の鳴き声、昼は子どもの叫ぶ声やマダムたちの井戸端会議、夜はイキった若者がスポーツカーをブバババとふかしていてとてもうんざりする。

相変わらず私はいつも家にいて、耳が悪い父親の声はいつも大きくて自室にまで響いてくる。母親の独り言は声はそこまで大きくはないものの狂ったように5秒に1回ほど聞こえる。私はこれらを聞いているのがとてつもなく嫌で殺したくなってくる。すべて消えれば音も消えるのに。何も思わないはずの子どもの声や癒されるはずの鳥のさえずりさえもすべてが私にとってうるさくて耳障りでしかない。イライラしてきて無性に暴れたくなる。頭をかきむしって手のひらが毛で覆われるまで気づかずにいた。私はここにいるのがものすごく苦しいと。

眠りが浅くなるからと、寝る前だけはやめていたタバコを寝る前に吸ってしまった。妙に落ち着かなくて眠れなくて、かと言って吸ったら眠れるというわけでもなく。私が今こうして普通の生活を頑張ろうとしているのに、襲われるこの憂鬱感や不安感、焦りはなんなのだろう、と考えてイライラして、なぜ私がただの”普通”の生活をするためだけにこんなに毎日頑張らなくちゃいけないんだと思った。急がないといけない、焦らないといけない。そう考えてしまうほど物事はすべて進まずに止まってしまう。私が私でなくなってなにも機能しなくなる。苦しい。吐きそう。頭が痛い。だるい。イライラする。他人の目が気になる。全員が私のことを醜いと感じていて存在する意味もないんだと思っている。こんな思想が四六時中私の中に巡っている。

普通に生きてるだけなのに、過去の失態への不安や未来への不安がずっと行ったりきたり私の脳の中に入り込んでどうしようもなくなる。あの時こうなったからまたこうなるかもしれない。あの人があの時こう言ったからまたこう言われるかもしれない。不安がありすぎて何かを行動するのも言動するのもいちいち躊躇する。できない。何もできない。私には何もできないんだと、そう考えているうちに時間は過ぎて1日が終わっている。外に出たらきっと近所の人とすれ違って、あそこのお宅の娘さんニートなのねと嘲笑われ、街に出るとブサイクのくせに街を歩くなと軽蔑され、知り合いに会うとお前まだ生きてたんだ、と見下されるに違いない。ずっとそんな思いを巡らせながら今日もまた、家から出られない。

何もできないなら何もしなくていい、そう思うけど何もしなかったらまたこういうことを考えてしまう。だから私は今日も「死にたい」って思うしいろんな人に対して「消えろ」と思っている。