空腹だとバファリンも飲めない

バファリンで自殺はできるらしい。

先日ネットで調べたらYahoo知恵袋に載っていた。バファリンは市販の薬の中では特に致死率が高いそうだ。しかし1箱ぐらい飲んだだけでは死ねないのはわかっている。だから何箱も買うお金がないという人は死ねないということだ。

ちなみに自分が愛用している睡眠導入剤ドリエル」でも自殺ができるらしい。でも200錠以上飲まないとできないらしい。私は服薬自殺するなら一番睡眠薬がいいと思っている。死ねなかった時の胃洗浄は辛いとよく聞くし、200錠を飲み終わるまでが辛いだろうけど、眠ったままもう今までの辛い現実を見なくて済むのだと考えたらとても気が楽そうだと思った。眠るのは楽だ。起きるのは苦痛だ。ずっと眠ったままならどんなに楽だろう。

昨今の記憶が曖昧の中この文章を書いている。自殺未遂を連続して行った私は今ベッドの上にいる。きっと昨日のことかもしれないけど、もっと前かもしれない。充電ケーブルで首をぐるぐる巻きにして思いっきり引っ張って息が止まるまで、脈が遅くなるまでずっと私の持てる力の限りを尽くして強く強く死への道へと進んで行っていたのだ。だんだんと頭が痛くなってくる。脳味噌が揺れている。目の焦点が合わなくなって首全体が脈で動いていた。その動きもそのうち静まって行った。しかしケーブルは細くてめり込むだけなのでなかなか難しい。今度はパーカーのような布製のもので首全体を締め付けたらどうだろうと思い、実行した。苦しいという感情よりも、「やっと楽になれる」という感情しかなかったから迷いはなかった。目で見えるものが全て微生物のようなキラキラしたものが見えた。私はこれからキラキラな世界に行くんだと思ってワクワクしていた。涙が止まらなかった。覚えているのは3時間泣き続けていたことだ。きっと体感時間は3時間程度で、その間、母の冷たい手の平の温度が記憶にある。いつのまにか母の手の感触はシワシワになっていて、自分の手や同年代の人たちの手とは全く違うものだった。でこぼこがあり「肉」というよりは「皮膚」の確率が多くて、心配になった。

天井が真っ白だ。蛍光灯の光がだんだん見えなくなっていく。天井は白いはずなのに少しキラキラしていて、色も出てきた。小さい細かな緑や赤や黄色。キラキラしていた。喉の奥から変な音がした。

そこからの記憶があまりないけど、記憶しているのは、その後私は大量にお菓子を食べて満腹になって眠りについたことだ。この間、何日あったか覚えてはいないし、覚えてない自分が嫌になる。記憶力がなくて馬鹿だなと思った。これじゃあ学校の勉強も覚えられなくて単位を取るのが危ういなと思った。

その前の話だ。しばらく家に帰らなかった。外で過ごす何にもない時間は「暇」という言葉では表せなかった。苦痛なのかもしれないけれど、何も考えずに空気と一体化したように、ただただ口を開けたまま上を見ていた。空から飴が降ってきたら、私は「甘い」と思うのだろうなと、思いながら。

雨上がりの湿ったベンチに座っていると太ももが冷えてくる。そこに「こんばんは」と口にした中年男性が近寄ってきた。よくわからなかったし私に声を掛けているのかわからなかったので真顔でじっとしていたら二回目の「こんばんは」が聞こえた。よくわからないから無視していたら去って行った。それから30分後くらい、坊主で半ズボンを履いていて、タバコを吸いながら近づいてきた男の人がいた。堅いがよくてとても怖かったのでじっとしていた。タバコの煙が臭くて腹が立った。何故それをわざわざ私に吸わせるのか、もし私が妊婦だったらどうするんだ、などと思っていたら「今何してるんですか」と言われたので「人を待っています」と答えたら「じゃあ忙しい感じですか」と言われたので「そうですね」と答えた。私は疑問に思った。その時私はマスクをしていて、目は腫れていて、線のようになっていた。その目で見ているもの全てが悪のような目つきをしていた。それなのに声を掛けてきている人たちはきっと私が悪を裁ける人だと思って、助けを求めていたのかもしれない。けれど私は生憎「暇」ではなかったので睨みつけたら逃げていくあの人たちを背中で見送った。

そろそろ携帯が止まるのでこれが最後の更新になると思います。携帯は復活することがあるかわからないし、私自身もうこの世に未練はないので、機会があれば、近々みなさんとは違う世界で苦しみ続けるでしょう。苦しんだ後も苦しむのは、悪いことをしたからです。殺人は悪いことです。なので、自分を殺すことも悪いことです。私はそれがどんなに苦しいかわからないからみんなで祝ってほしいです。私がもしいなくなったら祝ってほしいです。私という存在が骨になるまでをどうか祝ってください。でも、見送らなくていいです。ただ、その報告を受けた時あなたは、喜んでください。私がいない世界はきっと綺麗で純朴で、あなたの憎かったものも全てなくなると思います。私は消しません。私が生きてきたことを残し続けます。連絡先も、ログインするようなサイトも全てログアウトしません。それが残り続けて、誰かが何年後かにそれを見て、私がどれだけ迷惑でいらなかった人間なのかを再確認して、そこでまた祝う気持ちになってほしいのです。喜んでください。きっとうまくいきます。あなたの人生も、あなたの愛する人の人生も、きっとうまくいきます。なので私は千の風にならず黙ってじっとお墓の中に眠っています。手を合わせないでください。それよりも前に私の周りのものを全て壊してください。それが残されたあなたにできることです。

飽きてきたのでさようなら。

最後に触れたあなたの肌、今でも覚えています。忘れません。あの時着ていたワンピースの柄、忘れません。日差しが強い中ワンピースから出た細い足を紫外線から守る私の手、よく覚えています。見えない道を2人で歩いて、線香の匂いがする家までたどり着いたのを覚えています。

最後に見た顔が思い出せません。私は今あなたの顔が思い出せません。笑った顔があんなに素敵だったこと、思い出せません。私の思う「あなた」という人がどういう関係だったのかも思い出せません。どうしてでしょうか。自分の顔も思い出せません。2人が確かにそこにいたことも、何をしたかも、何を見たかも、きっと神様が記憶しないほうがいいと思って、私の中から消したのでしょう。

あなたは覚えていますか?私は幸せでした。

大好きでした。さようなら。